プレミアリーグ版“マネーボール”?清貧クラブのニューカッスルが躍進。」
このナンバーの記事、精査してみましょう。

まずマネー・ボールに対する認識が明らかに間違っていると思われます。
オークランド・アスレチックスは、メジャーリーグ全球団の中で
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こんな感じの状況だったわけです。下から数えた方が早いというチームの総給与。
対して、ニューカッスル・ユナイテッドの場合、下から数えて、左手の指と右手の指を数えてもまだ名前が挙がらないくらいの財務状況だったはずです。だから、それとこれを比べること自体に問題がある。どこがマネー・ボールの状況なのか理解に欠けます。

続いて補強の問題。
マネー・ボールの場合、ビル・ジェームズの本に影響を受けたオークランドアスレティックスの会長の下、GMビリー・ビーン、そしてポール・デポテスタといった人物が、当時ではそれほど注目されていなかった「出塁率」に目をつけて選手補強を行っていったというわけです。
ただ、サッカーの場合、出塁率ともかく、打率・本塁打・打点に相応する指標すら存在しない中で、マネー・ボールのような事象というのがどういうモノなのかが理解できません。ニューカッスルがここ最近補強で成功しているのはグレアム・カーによるところが大きいわけだし、先述の通り、指標がまだ通用しない世界でどうして好結果を得られたかと言えばスカウティングと交渉の賜物である以外に他ならない点を、文章に表記がないのは何故なのか?理解に欠けます。ファンタジーです。

また、現在、サッカーにおけるデータ解析を使ったチーム強化戦略というものを取り入れているチームは上位チームから始まっていると言うことも非常に大事な話です。サッカー分析の有名なソフトウェア会社は自らがどのチームと提携しているかをしっかりとインターネットのホームページにも書いてあるのでご覧なさい。それに追随するように中位下位も取り入れている段階であり、マネー・ボールで展開されるアスレチックスのように、ニューカッスルが先駆であった事実は全くないわけです。

とりあえず、この3点からでも、この記事が如何に、事実を誤って認識して書かれていると推測できるかというのが理解いただけたでしょうか。
マネー・ボール、とにかく読んだ方がイイですよ。

マネー・ボール (RHブックス・プラス)

マネー・ボール (RHブックス・プラス)

最近ではサイモン・クーパーの非常に優秀な文章を見ましたし、かつてジョナサン・ウィルソンがマネー・ボールに影響を受けたソフトウェア会社とそれを導入したプレミアリーグのチームの話を書いていたのを記憶していますが、そういった辺りを含めても、「マネー・ボール」、野球を回避したいと思っている人でも読んで価値のある本です。
特にデータのお話(4章)と選手獲得(5章)が面白いです。