2021年のチャンピオンズリーグ決勝。
9年ぶりの決勝進出となるチェルシー。9年前はミュンヘンバイエルン・ミュンヘン相手に勝利。
途中出場のディディエ・ドログバの起死回生のヘディングゴールと対照的に活躍ができなかったのがマリオ・ゴメス。敵陣でのボールタッチ数が明らかに少なく翌シーズンの優勝ではマリオ・マンジュキッチにポジションを取られていた印象。あの試合でヨーロッパデビューを果たしたのがライアン・バートランドだったあたりは記憶に残っている。アリエン・ロッベンのPK失敗、それは翌年の優勝に続くお話。
チェルシーがCLの上位に来る年は、準優勝に終わったアブラム・グラント(ジョゼ・モウリーニョ解任)、準決勝でノルウェー人の審判による明らかな誤審で敗退したフース・ヒディンクルイス・フェリペ・スコラーリ解任)、そして優勝のロベルト・ディ・マッテオ(アンドレ・ビラス・ボアス解任)と、途中就任がそれなりにある。(勿論、クラウディオ・ラニエリASモナコに不思議な交代策で自滅した年もあるし、ラインズマンゴール事件を含めてモウリーニョは3回準決勝に来ている。)
そして、今回のトーマス・トゥヘルという昨季はパリ・サンジェルマンで決勝進出した監督が、違うチームで2年連続決勝進出という珍しい記録を引っ提げて登場するわけである。


戦力の実情だけで分析した場合、マンチェスター・シティーのほうに分があると思わざるを得ない。ケビン・デ・ブライネはプレミアリーグで1番優れている選手の一人に挙げても差し支えなく、ドイツ代表でのパフォーマンスを含めイルカイ・ギュンドアンは過去の殻を破ってMFとして得点も取れる選手として成長、今季のFWA年間最優秀選手賞ルーベン・ディアスの加入はバックラインの強化されたし、左足のクロスが拙いなら左足のクロスを蹴る状況を作らなければよいという発想を示したジョアン・カンセロは見ていて興味深いものがあった。そんな相手にどのように戦うのか、という難題がこの決勝戦である。
トゥヘル体制でペップ・グアルディオラ率いるシティーとの対戦は2回。FAカップでは1-0の勝利、プレミアリーグでは1-2でシティーのホームでブルーズが勝利している。
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勝てた試合が、セルヒオ・アグエロのPK失敗で取り逃した印象がある。この試合はCL準決勝明けでシティズンズがメンバーを落としていたし、FAカップでも面子が全員そろっているとは言い難い。この3度目の戦いで、フルメンバーを揃えたシティーがやってくることを踏まえるとやっぱりシティーに分がある印象。
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この逆転勝利のHTでトゥヘルが何をしたのか、ちゃんと説明したり、試合前後の彼の会見はとても面白くて、私は人物として彼には好感を持っている


さて、ブルーズに対して気になっているのは、トゥヘル体制で唯一達成した逆転勝利がこのシティー戦で、その後のアーセナルFA杯決勝のレスター、と1-0をひっくり返すことができず、最終節のアストン・ヴィラ戦も2-0から1点は取ったが同点にも追いつけず負けている。アタッカーの得点力に関しては心配の種であり、近時登場が少ないオリヴィエ・ジルーは何があったのか心配になるし(アトレチコ・マドリード相手に得点したのは彼なんだけど)、ティモ・ヴェルナーはスピードの脅威を相手守備陣に与えることはできるがフィニッシュで失敗することが頭痛の種、メイソン・マウント、クリスティアン・プリシッチ、カイ・ハフェルツ、と若手の名手が揃っている中で最善の組み合わせが実はしっくりと決まっていない。この辺りは得点が必要になってくる局面になればなるほど重要になる。故にこの決勝戦は先制点が大事になるし、先制点を与えないことも同様に大事になる。(サッカーの表裏一体型球技としての難しさである)
人選と言えば、ここ数試合でポジションを入れ替えているウィングバックの右CB、リース・ジェームズとセサール・アスピリクエタは、結局どちらのポジションになるのかという点は気になる。右サイドはジョルジーニョとカンテが揃った場合に、カンテが右側に立ち位置を取るのを好み、ジョルジーニョが真ん中で立った場合に右側に人数が多くなり、縦への関係から選手間の配置を如何にバランスよく取るのかという点でチームとしても試行錯誤しているものと考えられる。加えて左のCBのアントニオ・リュディガーがMFのアンバランスから空いたスペースをドリブルで上がっているシーンは幾度か見ている。
傑出したドリブラー、40m級のパスで試合の展開を変えるという手段がない点で、細かい積み重ねで点を取ることが求められている分、一発で決める武器は結局最後のところ、スピードになるかもしれない。ヴェルナーやハキム・ジーエシュのスピードで相手を縦に釣ったところで他の選手の攻撃参加でペナルティーエリアを侵攻する。ただ今回の対岸にはスピードでネイマール筆頭に様々な選手を抑えたカイル・ウォーカーがいる。勿論ウォーカーではないサイドから(カンセロかジンチェンコかはたまたバンジャマン・メンディか)攻める可能性もあるけれど、相手の守備が簡単に穴になるとも限らず、可能性は90分の中で数度あるくらいだろうと思われる。その中で1度でも決めたら決勝点の可能性もあり、誰かが1つ大仕事をしてくれることが、切望されている。


客観的、第三者の立場からしたら、今回のイングランド勢同士の対決(3度目だ)は、チェルシーが先制してからの方が展開としてワクワクする。マンチェスター・シティーが先制をしたらそのままシティーが勝利する可能性が高そう。だからこそブルーズが1点を決めてからの戦術的にも情熱的にも熱い試合になってくれると面白い。