国家緊急権

今回の東日本大震災について、日本政府は、緊急事態として対処している感じがしないし、
私自身が、「復興本部を作って、地方自治体の上級庁として対処しろや」とか書いている最中に
国家緊急権のことが頭を過ぎったので、少々調べることに。
まず、国家緊急権の一般的定義ですが、

戦争・内乱・恐慌ないし大規模な自然災害など、平時の統治機構をもってしては対処できない非常事態において、国家権力が、国家の存立を維持するために、立憲的な憲法秩序(人権保障と権力分立)を一時停止して、非常措置を執る権限

ということからスタートなのですが、
国家緊急権について、大きな文章を探したら、こう書いてありました
「はたして憲法の予定する統治組織機能の作用によって対処できない緊急事態は(中略)否定的に解さざるを得ない」

岩波講座 憲法〈6〉憲法と時間

岩波講座 憲法〈6〉憲法と時間

国家緊急権で、私が注目していたのは、緊急事態だから、執行権を国家に集中させること、だったのだが、国家緊急の想定が「有事=戦争」っていう脳みその、憲法学者達の文章って、結局、大災害に国家が救済することを、考えていないのなと思わずにいられない。
ところで、日本で一番有名な憲法の本には、「憲法上の根拠無く緊急事態に対して超憲法的な非常措置として行使されるものは、方の問題でなく、事実ないし政治の問題」と憲法学は、匙を投げているというお話だった。真面目に考えるんじゃなかった。
憲法 第五版

憲法 第五版

ということで、政治論とか社会論に走らざるを得なくなる。
ちなみに、この大震災で色々人の主張を見たのだが、「官僚が頑張れ」って説ほど笑ったモノはなかった。嘗て「官僚が酷かったから」政治改革をして、首相に権力が集中するようになった、小泉政権が集大成(ただ、行政改革および内閣の経済財政諮問委員会についての評価がこれまでの主で、今回のような執行権に関しては、誰も考えられない事態だったんだよ)
そして今回の菅直人の失態を見ると・・って時に私は政治プロセスと阻害要因を検討していたのだが
小泉政権―「パトスの首相」は何を変えたのか (中公新書)

小泉政権―「パトスの首相」は何を変えたのか (中公新書)

首相支配-日本政治の変貌 (中公新書)

首相支配-日本政治の変貌 (中公新書)

内閣総理大臣が、しっかりとリーダーシップを発揮して、事態に対処するってことを、考えなければならない事態が、まず考えられなかった事態なのだろうか?(リーダーシップ概念でこれまで言われるのは、社会哲学とか公共哲学の、「公共善をもってやれ」とかそういう抽象的な話くらい)
ちなみに、内閣法では、国家の「危機管理」ってものがしっかりと定められておりまして、その事務を統理するために、内閣危機管理監が置かれて、伊藤哲朗って元警視総監の人が務めているはずですが、
(大規模な自然災害には、災害対策基本法だってある。当然の事ながら)
私は、超憲法的に、国家が行政体より強い権限のある組織を置いて執行するとか、非常事態省を置くとか、いう話は、どうやったら進むのか?ってことを考えているところ、この憲法論のオチです。
だから、実際、政治家、政治家のトップである人、しっかりやってくださいと願うしか無いの?
自然災害はわかったけど、複合要因の場合どうするの?って話の解決策、原子力発電所放射性物質を外部流出した場合どうするの?って話の疑問は消えないし、
復興のグランドデザインはどうやったら作ることが出来るのだろうか?って話もまるで見えない。「緊急事態」って話から始まると。