人選ミス。考えすぎ。
今回のUEFAチャンピオンズリーグ決勝を終えて、各所で言われた単語がこれでした。


https://encyclopector.hatenadiary.org/entry/2021/05/28/235601

今回の決勝で、(ペップが)考えすぎて失敗する試合だけは、シティーおよびチェルシーのファンではない私としては見たくない。というのが要望。

と、試合が行われる前に書いた私の悪い予感が的中したのが、この試合でした。
というわけで、先ずはペップ・グアルディオラマンチェスター・シティーを追体験する形で、決勝戦を考えてみましょう。

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MCYCHE

マッチレポートはこちらをご覧ください。
www.uefa.com
www.bbc.com

前半早々のラヒーム・スターリングのチャンスはありましたが、マンチェスター・シティー枠内シュートは試合を通じてこれ1本。
ボールはそれなりに持つものの、GKを脅かすシュートを撃つことができない。
一方でチェルシーは毎度恒例のティモ・ヴェルナーをスピードあるディープスレットとして配置した上で、ジエシュではなくカイ・ハヴァーツを起用。
得点は所謂ファストブレイクで、GKからのボールが左サイドに通り、左サイドのマウントからハヴァーツに一本のパスが通って、冷静にGKをかわしてゴール。
先制点の後もシティズンズがゴールを脅かすシュートを撃ったのは本当に時間が経ってから。(シュート寸前の場面はあったけれども、アントニオ・リュディガーに防がれている)
一番惜しかったリヤド・マフレズのシュートも後半アディショナルタイムのロングスローのどさくさ紛れで撃ったシュートでした。GKが反応できなかったのでとても惜しかったですが。
結論として、ペップのチームは、攻撃が機能しなかった。ということになります。中盤の選手達がパスをつないで、スペースを侵略し、相手の守備を困惑させたうえでシュートを撃ってゴールを重ねる。そんな理想的なことはできませんでした。
www.bbc.com
BBC筆頭に、彼の選手選考の判断が誤りだったと言われていることですが、
ペップ・グアルディオラの発言を見てみましょう。
www.independent.co.uk

ギュンドアンは何年もこの(ディフェンシブミッドフィールダー)ポジションをやっている。スピードがあって、小さな選手を見つけられる、性能があり、中央で中盤で、相手のラインの間で輝く選手だ。だから私は選んだんだ。

と、この判断について試合後会見で述べています。(残念ながら「何故フェルナンジーニョを(ロドリも)落としたのか」という質問がなかったので回答もない)
しかし、疑問が残る点は一つ、相手のラインの間で使うならディフェンシブミッドフィールダーよりも高い位置のほうが良くない?
この解決がフェルナンジーニョであり、ロドリだったと思われるので、この選手選考は理解に苦しむわけです。フェルナンジーニョ(またはロドリ)は、優秀な選手達が化学反応を起こすための大事な触媒のような選手であり、戦術的な布石のはずだったわけです。それを除いたら期待したい結果を得られるとは思えません。更に言葉を付け加えるなら、イルカイ・ギュンドアンが要求する結果を出している試合は同時にロドリが先発している。
MFの人選としては、試合開始当初はケヴィン・デ・ブライネがトップの位置で使われていて、彼の良さを消しているように思いました。彼はプレミアリーグの中で最高峰のMFであるわけで、どうして彼をMFとして使う信頼をしないのか、理解に苦しみます。フィル・フォーデンとラヒーム・スターリングが同時に起用されて、サイドアタックが逆に弱体化した点の不思議さ。
クリス・サットンあたりはガブリエル・ジェズスが先発でないことも怒っているので、確かに。真ん中でジェズスがいるからこそ、他の選手を引き立たせる、という選択もあったのではないかと思うわけですし、昨季のCLレアル・マドリード戦のジェズスが左のウィングで相手の右サイドに対応する奇策も素晴らしかったわけで、ジェズスが先発した上でいくつかの選択肢があったとも思います。


敗因で考えられる点は、選手選考を除けばアクシデントで退場したデ・ブライネを補完する選手がいなかったこと。アンタッチャブルな選手故に、彼が不在となったところでの対応が上手くいきませんでした。(KDBの交代がジェズスだったのは、それでもフェルナンジーニョを使わないのかと驚いたところ)デ・ブライネの素晴らしい点はロングレンジのパスも素晴らしいところですが、的確なポジションで見事なシュートを決める力があるところ。相手の守備選手は常にシュートも意識した対応を取らざるを得ないわけで、脅威が減ったのは、確かなところ。アタッキングミッドフィールダー、ベンチにいなかったんですね。


さすがに試合前の選手のコンディションまでわからないですが、シティーの選手をどう配置するかを考えると。
エデルソン
カイル・ウォーカージョン・ストーンズ、ルーベン・ディアス、オレクサンデル・ジンチェンコ
フェルナンジーニョ
ケヴィン・デ・ブライネ、イルカイ・ギュンドアン
リヤド・マフレズ、ベルナルド・シルバ、ラヒーム・スターリング
となるでしょうか。フォーデンではなくフェルナンジーニョギュンドアンは一列前に配置して相手の守備を困らせる。デ・ブライネの守備の負担を軽減するためにシルバとデ・ブライネは縦のポジションチェンジは繰り返す。
1点欲しい場面になった場合は、ガブリエル・ジェズスを入れることを考える。
1点守る場面になった場合は、ロドリを入れることを考えたうえで、前からチェックをかける選手を入れる。
サイド攻撃を行う際に相手選手がマーカーを注視して追ってこないのならば、狙う弱点はリュディガーのサイド。右から崩して左で決める。
ティー側の守備の不安点は、ヴェルナーのスピードへの対応力になるので、中央のフェルナンジーニョがストーンとして機能することで、他の選手は中央の不安を軽減して、相手のスピードはそれぞれ対応する。
あたりを用意しておけばと思いました。


それでも、失点シーン。ストーンズが右サイドの高いところに上がり、ヴェルナーに引っ張られたルーベン。ハヴァーツへの対応が遅れたジンチェンコ。ブルーズ側の攻撃が見事だった分、大事なことはもっと相手守備に脅威を与える、ペップのチームの攻撃がもっと機能していたら、ということに尽きるのではないでしょうか。

自分でUEFAチャンピオンズリーグ決勝の分析を書く前に他人のツイートを先に紹介して自分を追い込む形。

今どき、即日で書かないと出遅れ、周回遅れですよね。
WOWOWが憎い。開始20分ほど、視聴できなかった。UCL決勝。
チャンピオンズリーグアンセムは聴けなかったし、解説もアレじゃな。

2021年のチャンピオンズリーグ決勝。
9年ぶりの決勝進出となるチェルシー。9年前はミュンヘンバイエルン・ミュンヘン相手に勝利。
途中出場のディディエ・ドログバの起死回生のヘディングゴールと対照的に活躍ができなかったのがマリオ・ゴメス。敵陣でのボールタッチ数が明らかに少なく翌シーズンの優勝ではマリオ・マンジュキッチにポジションを取られていた印象。あの試合でヨーロッパデビューを果たしたのがライアン・バートランドだったあたりは記憶に残っている。アリエン・ロッベンのPK失敗、それは翌年の優勝に続くお話。
チェルシーがCLの上位に来る年は、準優勝に終わったアブラム・グラント(ジョゼ・モウリーニョ解任)、準決勝でノルウェー人の審判による明らかな誤審で敗退したフース・ヒディンクルイス・フェリペ・スコラーリ解任)、そして優勝のロベルト・ディ・マッテオ(アンドレ・ビラス・ボアス解任)と、途中就任がそれなりにある。(勿論、クラウディオ・ラニエリASモナコに不思議な交代策で自滅した年もあるし、ラインズマンゴール事件を含めてモウリーニョは3回準決勝に来ている。)
そして、今回のトーマス・トゥヘルという昨季はパリ・サンジェルマンで決勝進出した監督が、違うチームで2年連続決勝進出という珍しい記録を引っ提げて登場するわけである。


戦力の実情だけで分析した場合、マンチェスター・シティーのほうに分があると思わざるを得ない。ケビン・デ・ブライネはプレミアリーグで1番優れている選手の一人に挙げても差し支えなく、ドイツ代表でのパフォーマンスを含めイルカイ・ギュンドアンは過去の殻を破ってMFとして得点も取れる選手として成長、今季のFWA年間最優秀選手賞ルーベン・ディアスの加入はバックラインの強化されたし、左足のクロスが拙いなら左足のクロスを蹴る状況を作らなければよいという発想を示したジョアン・カンセロは見ていて興味深いものがあった。そんな相手にどのように戦うのか、という難題がこの決勝戦である。
トゥヘル体制でペップ・グアルディオラ率いるシティーとの対戦は2回。FAカップでは1-0の勝利、プレミアリーグでは1-2でシティーのホームでブルーズが勝利している。
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勝てた試合が、セルヒオ・アグエロのPK失敗で取り逃した印象がある。この試合はCL準決勝明けでシティズンズがメンバーを落としていたし、FAカップでも面子が全員そろっているとは言い難い。この3度目の戦いで、フルメンバーを揃えたシティーがやってくることを踏まえるとやっぱりシティーに分がある印象。
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この逆転勝利のHTでトゥヘルが何をしたのか、ちゃんと説明したり、試合前後の彼の会見はとても面白くて、私は人物として彼には好感を持っている


さて、ブルーズに対して気になっているのは、トゥヘル体制で唯一達成した逆転勝利がこのシティー戦で、その後のアーセナルFA杯決勝のレスター、と1-0をひっくり返すことができず、最終節のアストン・ヴィラ戦も2-0から1点は取ったが同点にも追いつけず負けている。アタッカーの得点力に関しては心配の種であり、近時登場が少ないオリヴィエ・ジルーは何があったのか心配になるし(アトレチコ・マドリード相手に得点したのは彼なんだけど)、ティモ・ヴェルナーはスピードの脅威を相手守備陣に与えることはできるがフィニッシュで失敗することが頭痛の種、メイソン・マウント、クリスティアン・プリシッチ、カイ・ハフェルツ、と若手の名手が揃っている中で最善の組み合わせが実はしっくりと決まっていない。この辺りは得点が必要になってくる局面になればなるほど重要になる。故にこの決勝戦は先制点が大事になるし、先制点を与えないことも同様に大事になる。(サッカーの表裏一体型球技としての難しさである)
人選と言えば、ここ数試合でポジションを入れ替えているウィングバックの右CB、リース・ジェームズとセサール・アスピリクエタは、結局どちらのポジションになるのかという点は気になる。右サイドはジョルジーニョとカンテが揃った場合に、カンテが右側に立ち位置を取るのを好み、ジョルジーニョが真ん中で立った場合に右側に人数が多くなり、縦への関係から選手間の配置を如何にバランスよく取るのかという点でチームとしても試行錯誤しているものと考えられる。加えて左のCBのアントニオ・リュディガーがMFのアンバランスから空いたスペースをドリブルで上がっているシーンは幾度か見ている。
傑出したドリブラー、40m級のパスで試合の展開を変えるという手段がない点で、細かい積み重ねで点を取ることが求められている分、一発で決める武器は結局最後のところ、スピードになるかもしれない。ヴェルナーやハキム・ジーエシュのスピードで相手を縦に釣ったところで他の選手の攻撃参加でペナルティーエリアを侵攻する。ただ今回の対岸にはスピードでネイマール筆頭に様々な選手を抑えたカイル・ウォーカーがいる。勿論ウォーカーではないサイドから(カンセロかジンチェンコかはたまたバンジャマン・メンディか)攻める可能性もあるけれど、相手の守備が簡単に穴になるとも限らず、可能性は90分の中で数度あるくらいだろうと思われる。その中で1度でも決めたら決勝点の可能性もあり、誰かが1つ大仕事をしてくれることが、切望されている。


客観的、第三者の立場からしたら、今回のイングランド勢同士の対決(3度目だ)は、チェルシーが先制してからの方が展開としてワクワクする。マンチェスター・シティーが先制をしたらそのままシティーが勝利する可能性が高そう。だからこそブルーズが1点を決めてからの戦術的にも情熱的にも熱い試合になってくれると面白い。

今回は真面目にマンチェスター・シティーおよびジュゼップ・グアルディオラを考える。

まず、名前。Josep Guardiolaが発音記号は [ʒuˈzɛb ɡwəɾðiˈɔlə]だから、ジョゼップではない。ジョゼップ・グアルディオラと書きたいし、どちらかと言えばグアルディオーラってことになる。うん、これは面倒くさい名前だ。やはり愛称であるペップ・グアルディオラと言うことにしておこう。(以下ペップと略す)
彼のサッカーを非常に丁寧に、うるさいくらいに上手に説明している本はこれ。残念な日本語タイトルなので、そっちは載せないがこの本を読めばおおよそのことを理解できる。

スペイン語とは違い、英語でペップ本人が説明している映像が今年出ていて、これはとてもわかりやすい。

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この説明を聞く限り、ペップのフットボールFCバルセロナからチームが変わってもスタイルは変わらない。
大事なことを要点にすると

  1. ボールを守ること(自分たちのボールにする)
  2. 敵陣でパスを多くつないでチャンスを創出すること(ゴールを生むのはシュートだから)
  3. ボールを奪われたら前から奪いに行くこと(即ち相手の機先を潰す)、ここでの表現だと3つの弾丸が100%で追うとか表現される

今季、話題になったジョアン・カンセロがレフトバックからミッドフィールダーの位置で プレーを移動することに関しても、「4,5,6,人の選手でパスをつなぎたい、コントロールしたい、ただそれだけ」と発言しているに過ぎない。
このことを上手に説明しているのは、サッカーの戦術の分析として非常に有名なジョナサン・ウィルソン。

彼の説明で使われる単語は「交換」で、即ちカンセロがポジションを移動することで、本来のレフトバックが担うであろう役割を違うプレーヤーと交換するわけである。
右利きのカンセロの昨季からの問題点は左足でのクロスがそれほど優秀でないことであるが、そんな選手がレフトバックの花形である左足からのクロスを必要とされる位置にとらないことは、誰かが左サイドにポジションを埋めることで補完されて、強力な攻撃となる。
「カンセロロール」とか簡単に言われるけれど、この動きが成立する要因はウィンガーのラヒーム・スターリングやフィル・フォーデンあたりが、どのあたりのポジションでパスおよび攻撃のポジションを配置され貢献しているかによるわけである。


ちなみに「偽SB」とかいう単語は、ドイツ語関係で検索はひっかかるが英語では主流の文面では出てこない。ジョナサン・ウィルソンの有名な著作「Inverting the Pyramid: The History of Football Tactics

にちなんで、Inverted Full Backと言われた説明の文章は見たことあるが、これも大手で文章を担当している作者でないので、信用に欠ける。さらに言えば、そもそも「False」という単語は確かに「偽」という感じを当てることも理解できるが、「擬態」「擬える」「擬き」などという日本語にも当てはまり、フルバックの選手が「あたかもMFのようにプレーを行う」という行為を主眼に置けば「偽」ということよりも「MFとしてプレーが成り立っている」という事実、将棋の「成香」のような存在であると理解する方が、相応しい様に思える。

閑話休題
ペップのフットボールは、前述の3項目をパッケージした中身が、所謂「Juego des Positions」であるといえる。(本当なら紹介したいのが J Sportsでやっていたペップのドキュメンタリーなのだが、どうも期限切れで、試聴が不可能になってしまったようだ)
ボールを中心に攻撃と守備が行われ、人およびポジションが、監督の手のひらで遊戯のように動かされる、と言ったことがプレーで体現されている。非常に面白いし興味深いし、よくよく考えると過去の常識とは違うけれど理に適っている、というのが彼のフットボールの面白いところ。
何故このようなフットボールを行うかと言えば、バルサにはレオ・メッシという稀有な存在がいて、ゴールを計算できる。ドリブルで相手を無力化することに関しても世界一といえる。彼が中心にいることでその周辺を如何に上手に作るか。敵陣の高い位置でボールを奪ってメッシに渡せばとても良い状況が生まれる。こんな単純な計算はそうそうない。そうでなくても高い位置でボールを奪うことは、戦術の古典である、「Winning Formula」にだって載っているくらい自明の理である。

加えて書いておきたいのは、ポゼッションに対して「ストーミング」やら「カウンター」だとか対比して書く向きがあったりするが、ポゼッションも守備も全て含めたパッケージが戦術なのである。両輪であることが大切なのであり「強いチームはポゼッションだけでなく、カウンター強い」(大事なことは「も」ということ)がとても重要な指摘である。Champions League Magazineで過去にアレックス・ファーガソンが述べていたこの一文は非常に重い。
もっと言えば、ストーミングやカウンタープレス(ドイツ語で言うゲーゲンプレス)の端緒であるユルゲン・クロップはペップ時代のバルセロナを研究し「守備が凄い」ことに強さの要因があることを突き止めてチームを強化したわけ(過去のJ Sportsのインタビューなどを見るとよくわかる)で、起源はペップのバルサにあると言ってよい。なんなら、この本を読めばわかる。ドイツ流とか言われているがよくよく突き詰めたらバルサである。


バルセロナでのイノベーションはさすがに今回の主題と違うけれど、シティーに好感を持てるのは、バルセロナの良いエッセンスをちゃんと導入したこと。

広瀬一郎教授も傑作とこの本を評していたけれど、スポーツ経営学の本としてとても面白いし、こんなことしたら強くなるよね、って教えてくれる本である。
この中で、どうしてペップがバルサ監督就任に至ったのか(誰が落ちたのかも知る)、面白い話で、ここから始まったんだなぁと。
そんな著者のフェラン・ソリアーノがCEOをやっているのがマンチェスター・シティー。チキ・ベギリスタインSDが有名だけれど、こっちのスペイン人もチームの中で欠かせない存在。
(昔、三木谷浩史プレミアリーグの中継で映ったときに、日本語実況は「三木谷社長ですね」ってばかり言っていたが、英語実況は「CEOのフェラン・ソリアーノです」と説明していて、認識の違いって、出るものだなぁと思った記憶がある)
経営がしっかりしているので、ちゃんと選手もやってくる。だから強い。好循環の中で、唯一取り損ねているのが、UEFAチャンピオンズリーグのトロフィー。通称ビッグイヤー(大耳)。


昨季のオランピック・リヨネー(オリンピック・リヨン、以下「リヨン」)との対戦では、何故か奇を衒ったことをして敗戦。スターリングがゴールを決めていたら、ということも過るが、やっぱり何といっても、何で本筋通りの戦い方をしなかったの?という印象が強い。なんでそんなにリヨンを恐れたのか、リヨンとの戦力差を考えていなかったのか、リヨンのストロングポイントを何だと思っていたのか、とても不思議な負け方だった。
レアル・マドリードとの1stレグでガブリエル・ジェズスを左のウィングに起用する奇策は見事だったことは確かだが、奇策をする相手を間違えているようなお話。(同じシーズンのマンチェスター・ユナイテッド戦も奇策で失敗した象徴的な試合)
今回の決勝で、考えすぎて失敗する試合だけは、シティーおよびチェルシーのファンではない私としては見たくない。というのが要望。

何よりもまず、WOWOWの調査力の拙さと実況の下手糞さがイライラするヨーロッパリーグの決勝でした。

試合の分析よりも先にPK戦の記録を書いていきましょう。
・長いPKの記録
個人的な記憶と印象で、PK戦で蹴った人数が多かった印象があるのは、2005年のワールドユース
www.fifa.com
フジテレビで放送されていて、日本代表がオランダのクウィンシー・オウス・アベイェに見事にやられたことで有名になった大会。(そしてクウィンシーはアーセナルに来たけど、プレミアリーグで活躍しなかったな)
そんな中で起きたのが、準々決勝のナイジェリア対オランダ。
24人の選手がPKを蹴った。(つまり両チーム12人目まで行った)という伝説的な試合。キッカーのリストを見ると、ナイジェリアにはタイイェ・タイウォ、チネドゥ・オバシジョン・オビ・ミケルとか、いるわけです。オランダにはロン・フラールケネス・フェルメールライアン・バベル、ヘデウィゲス・マドゥロウルビー・エマヌエルソンイブラヒム・アフェライ、とか、揃っている。タイウォが2回目は失敗し、オランダのコリンズ・ジョンが決めて準決勝進出。なお、決勝でナイジェリアはリオネル・メッシセルヒオ・アグエロのいるアルゼンチンに負けます。いやぁ伝説ですね。(メッシやアグエロパブロ・サバレタエセキエル・ガライもいるチームの大会をWOWOWは知らんのか。あとWOWOWはフジテレビの出資企業)


PK戦の長い記録として、これまた因縁も残っていて有名なのが、2006年のアフリカネイションズカップ。準々決勝カメルーンコートジボワール
これも両チームとも12人の選手が蹴っています。失敗したのはカメルーンの12人目のサムエル・エトーマジョルカバルセロナにいたよな)のみ。
www.youtube.com
これは、大会前の2005年のワールドカップアフリカ予選、カメルーンコートジボワールが同組で、カメルーンは最終節エジプト相手に、1-1の引き分けのなかアディショナルタイムでPKをピエール・ウォメが失敗。(エトーやリコベル・ソングが失敗を恐れ、蹴りたがらない中、キッカーになったウォメが失敗)。コートジボワールが勝ち点1差で大逆転本選出場となった3か月後に起きた直接対決がこれ。
当時、アフリカの国の中でタレントが揃っていたのがこの両国で、ウォメは2006年からヴェルダー・ブレーメンの主力になって活躍したし、ワールドカップで出色の働きだったのはアーサー・ボカで早速Vfbシュツットガルトに移籍になったし、ロマリッチはこの後ル・マンで見た後にセビージャに転身していったという若手もさることながら、カメルーンエトー、ジェレミ、アトゥバ、ソング、ジャン・マクン、などなど。コートジボワールディディエ・ドログバ筆頭に、ゾコラコロ・トゥーレバカリ・コネ、アルーナ・コネ、エブエとか、更にはヤヤ・トゥーレもいたし、ボナヴェントゥル・カルーもいる。(サロモン・カルーはまだ代表に入れなかったわけだ)
この豪華面子と因縁で、長い長いPK戦だったことと、この大会、WOWOWセリエA中継にも大いに貢献した富樫洋一氏(ジャンルカ・トト・富樫)が客死した大会だったことでも有名なのに、WOWOWは忘れてしまっているなんて、なんてことだ。


・世界記録
PKのキッカー数の世界記録は2013年のハンプシャー・シニア・カップで29人連続成功の後、30人目が失敗したという記録があるらしい。大会そのものを知らん。
勝戦での記録としては、1992年のアフリカネイションズカップで、コートジボワール対ガーナが、12人目までいって11-10でコートジボワールが優勝。(アフリカはPKネタ多いな)
rsssf(サッカーの統計記録に対してとても重要な機関)によると、多く蹴った記録は48だ。(ナミビアの大会らしい)
Penalty Shootout Trivia
さすがに、マイナーな大会についての知識は、

という本で知る、オウンゴールのお話だったりとあるが、PKは確かに統計記録ネタを見たことがなかった。


今回のビジャレアルマンチェスター・ユナイテッドは、欧州のコンペティションやワールドカップと比しても、結構な数のキッカーを要した試合になったのは確か。
それでも最初に書いたオランダ対ナイジェリア、カメルーンコートジボワール、調べてすぐに出てくるようにして欲しいな。
WOWOWの調査力は、ググる力もなければ、wikipediaで数秒で見つかる努力も怠った、そんな印象を受ける。ダメだったし、実況も「こんな試合、みたことありません」って言うのはあまりにもチープだ。

NFLドラフトは続きます。
www.nfl.com

その他
1日目の指名を時系列的に見ていくと書くチームの思惑がわかって面白いですね。
前回の記事に続いて今回は1巡16位から見ていきましょう。

CB 16位ARI:Zaven Collins CBの上2つが売り切れた被害者の1つ。デプスを厚くするポジションが多く、高評価の位置にいたから指名とは言うものの、Patrick Petersonの穴は大きいよね。 EDGEよりも先にCollinsが売れたのは少々意外。
その他 17位LVR:Alex Letherwood RTが欲しかったんだから相応のピック。OLの中では足が速いのを選ぶ。
EDGE 18位MIA:Jaelan Phillips RBよりも重要度が高かったらしい。
その他 19位WFT:Jamin Davis DLが強い裏でLBというなんという的確ピック。


そんなことより速いぞ!40yds最速!

NYG 20位NYG:Kadarius Toney は?! 彼を評価するのは3日目までの全指名を見てからにしたい。

EDGE 21位:IND LTのCastonzo引退により、LTかEDGEかという選択。彼が残っていたから指名は悪くはない。
CB 22位TEN;Caleb Farley ここなんだぁ。という印象。
その他 23位MIN:Christian Darrisaw 欲しかった選手をトレードダウン後無事回収。指名権(3巡66位、86位)が増えたと考えると結構お得。24位PIT:Najee Harris ちっ。25位JAX: Travis Etienne 今年のドラフトの流行りなのか、QBと同じ出身大学の選手を用意する組み合わせ。
CB 26位CLE:Greg Newsome II 彼が残っていたから取ってしまった感じのピック。Troy HillをFA、Greedy Williamsが復帰、と考えたら少し考えモノ。でも取ったのだから仕方ない。
その他 27位BAL:Rashod Bateman WR1として、Lamar Jacksonを助ける選手として指名。うーむ。え?Toneyかどっちかだったって?
EDGE 28位NO:Payton Turner CB取れなかった上に、ここなのか。
CB 29位GB: Eric Stokes 速いデカい、ニーズは合ってる。でも、Aaron Rodgersが「戻りたくない」って言ってますけど。
EDGE 30位BUF:Gregory Rousseau 昨年のEpenesaに続く上位指名。まずはローテーションから。KC相手に仕留めきれなかった点の補強。
EDGE 31位BAL:Jayson Oweh 身体能力フリーク大好きですよね。自分たちのDEFにパーフェクトフィットだということで育てましょう。ちなみに指名後ご本人からの要望によりOdafe Owehというお名前になりました。
www.baltimoreravens.com
EDGE 32位:Joe Tryon 色々とやるDEFには適任な人かもしれない。JPPやBurrettのポジションはデプスを厚くする必要がある。多分他の選手を狙っていたんだろうけれどこうなった。字面を見る限りPhillipsが欲しかったんだろうけれど、アップしなかった。


いやぁ、もしかしたら未練杯で自分が指名したOwehがBuccaneersに行く可能性もありましたね。とりあえず興味深かったのは1巡ではCBの取り合いの様相。特に前日からトレードアップしてでも取ろうとしていたSaintsが失敗してしまったのは興味深いし、直後のPackersはCBの5番手を指名というのも面白い。QBのRodgersがどうなるかは別として。(WR取ってあげろよ、というお話はアナリスト筆頭に多くの人が思っていること)
売れ残りが多かった印象なのは、OT。Teven Jenkins筆頭にまぁまぁの売れ残り。DTの指名が1人もなかったのは不作と言うにふさわしい。
あとは、NYGですか。3日間でどういう指名ができるんだ。

ドラフト1日目が終わりました。

www.nfl.com
現実のドラフトは魑魅魍魎の世界です。いやぁ予想外のことが多かったですね。
やっぱり面白い。

全体のことは3日目が終わってから書くと言うことにして1日目の大事な部分を時系列順に言うと
QB ドラフト開始前に、Aaron Rodgersのトレード話が出てくる。しかも3位のSF。
www.nfl.com
実際には、3位で指名はTrey Lance。
その他 4位ATL:Kyle PItts, 5位CIN:Ja'Marr Chase, 6位MIA:Jaylen Waddle, 7位DET:Penei Sewell 大喜びしていたDET首脳陣が印象的でした。
CB NOがCBを欲しくてトレードアップするというお話が出てきていたものの成就せず。
profootballtalk.nbcsports.com
8位CAR:Jaycee Horn, 9位DEN:Patrick Surtain II
というわけで、NOの欲しかった選手は10位以内で消えます。CARは同地区の大型レシーバーと対峙するにはHornが最適と考え、DENはSurtainが残っていたことで指名を決断。
で、困ったのがCBに不安のあった10位のDAL。トレードダウンで同地区のPHI。
DALとしては、PHIにトレードしようが、PHIの次のNYGが、WRのDeVonta Smith を指名するだろう。という考えからヴァリューチャート的にはDALに有利にトレード。
談合ですね。


QB 4人目の指名。11位、NYGからCHIにトレードの上、Justin Fieldsでした。
www.chicagobears.com
ベアーズが色々とトレード話をしているなかで、まとまったのがNYG。
1巡11位に対して、1巡20位+5巡164位+22年1巡+22年4巡、とNYGに結構お得なトレードヴァリューではあります。向こうが欲しかったんだから仕方ない。
しかしNYGファンの私としては正直、Micah Parsons を指名するチャンスを逃したというのが正直な本音。
12位のDALがParsonsを指名。Sean Leeの引退を、同じPenn St出身のLBが埋める。ドラフト前のやりかねないと思うシナリオをやられる。(昨年の4巡C Tyler Biadaszと似てる)

その他 13位LAC:Rashawn Slater 順当 14位NYJ:Alijah Vera-Tucker ジェッツがトレードアップを仕掛けて成立。Zac Martinよりも高い順位になった。Mekhi Bectonと左サイドを組むと思うと結構脅威。MINは欲しい選手がまだ大丈夫だと判断したそうだけど、何故上がった。

QB NEがトレードすることなく、Mac Jonesを指名。
www.nfl.com
前半のヤマは、ここで終わる。Patriotsは、色々と準備していたそうだが、何もすることなく欲しかった素材が入ってくる。何か悪の帝国の力を感じざるを得ない。
Jonesとしては、彼のスタイルに最も向いているチームに指名されたことは確かです。Bill Belichick、Josh McDaniels、のスキームと化学反応を起こせばってところですが、私はCam Newtonの昨季はあのレシーバー陣でよく頑張ったと思うし、まだまだできると思っているから、1年寝かせるのか?って思うし15位という08年以来のプレーオフを逃したシーズンだからこそできたことなのかもしれない。(ちなみに09年のドラフトは1巡をトレードダウンしている)


1日目の前半だけでどうしてこんなに書きたいことが多いんだ。